
MOCHI designの安里望( @nozomi_asato ) です。
永く愛されるブランドづくりをテーマにグラフィックデザイナーとして長野県上田市を拠点に活動しています。
今回は、新サービスとして構築中の「ブランディングスタートプラン」のクライアント様の制作プロセスの様子を数回にわたってお伝えします。
ブランディングスタートプランは見た目だけじゃなくブランドとしての言葉や行動も一緒に考え、ブランディングの基盤をしっかりと作り上げるトータルサポートプランです。
もりとさとの事業は森林・竹林の整備だけでなく、そこから生まれる林産物等を活用するところまで事業化し、長年荒廃した里山の付加価値をつくり、持続可能で豊かな暮らしへ繋げることを目標とされています。
今回ご相談いただいたのは、取り組みが多岐にわたるため地主さんや行政、大学、農家さんや消費者など多方面に自分たちのやりたいことや想いを届ける必要があると感じていたからでした。
各方面にアプローチする前にまずは代表の田村 聡さんと副代表の市川 里美さん(以下聡さん、里美さん)2人の考えを整理する必要があると思い、コピーライターのtoishi 小林 拓水さん ( @toishi_takumi )(以下小林さん)にも参加していただいて、会社設立の背景や活動への想いを伺いました。
今回はその様子をお届けします。
会社設立の背景と構想

小林さん:まずは、会社設立の背景と何をやる会社なのか聞かせてください。
聡さん:もともとは大学を卒業後、森林組合に就職して5年間林業に携わっていました。
大学は環境学部に通っていたんですが、3年生の時に林業の体験をして。これが面白かったんです。
木を切って出す中で、丸太とか木材をもっと活かせないかなぁと考えるようになって、木材を使って何か『つくる』ことがしてみたいなぁと思ったんですよね。
そこで建築を勉強したくて専門学校に行きました。
建築を学んでみてとても楽しかったのですが建築だけをやるのも自分の性格的に少し違うのかもなぁと思っていて、林業や建築、その他のことも枝葉を広げて面白い展開にしていくにはもう自分でやるしかないって感じたんです。
もちろん環境問題とか地域活性化とか、そういう大義名分的な理由もあるんですが、元々の思いは、楽しいことをしたい、つくりたいというのが大きいですね。
でも1人ではできない、いろんな人に関わってもらわないとできないことだから、その器として会社をつくったという流れです。
里美さん:まず会社としてやりたいことは、人の活動によって自然環境や地域が良くなる「仕組み」を作ることです。
そのために山の整備をして出た資源を暮らしに取り入れられる形で提供したいと思っています。
ここ立科町は私のおばあちゃんの家があって昔から馴染みがあるんです。
立科は山もあって自然が豊富だし、芦田宿という昔ながらの街並みもあり古民家もたくさんある。
そして人の手が入らず放置されている山林の課題もあります。
私たちが目指す仕組みづくりや生き方の実践をまずはこの立科町から実現して広げていきたいと考えています。
森の可能性、切るだけではない面白さ

林業や森の魅力について、聡さんが「楽しい」と思う瞬間を語ってくれました。
聡さん:林業は正直肉体的にしんどいことも多い。
でも伐採が狙い通りにいって森がきれいになった時は本当に嬉しいんです。
後々施行した場所を見に行って、いい感じになっているのも嬉しい。
森を設計して、長期的に山の姿をつくり上げる。
切るだけじゃなく木材として出すまでをやるのでどう使うか、未来に向けた視点で考えるのが楽しいんです。
最近は切った後小口が綺麗だとどう使おうかという妄想が膨らみます(笑)。
自分が使える資源、フィールドっていう感じがして楽しいですね。
小林さん:どんな人にこの活動を届けたいですか
聡さん:そうだなぁ、いろんな人に知ってもらいたいけど、(森や資源の魅力に)気づいていない人に知ってもらいたいです。
知ってるか知らないかの僅かな差だと思っていて、きのこの菌打ちが楽しいとか、木の種類がたくさんあることとか、知らないことって意外とあるんです。やってみればフィットする人もいるだろうし、そんなきっかけになれたらなと思います。
木を切るだけじゃない森の可能性があるので、それを一緒に楽しめる、根底の考えが似ている人が集まってくれたらいいなと。
里山は宝の山、資源活用への想い

小林さん:もし、もりとさとの活動が無ければどうなるのでしょうか
聡さん:里山ってもともと人の手が入ることで出来た生態系があって、それが崩れて生物が居なくなってしまうのは悲しいと思うんです。
あと、放置された山林によって土砂崩れや野生動物による農作物被害など生活にも影響が出ています。
自分にとって里山は「宝の山」に見えるから、なぜこの資源を使わないの?という気持ちです。
「もったいない」という気持ちもあるし、でもやっぱり根底は「使いたいしつくりたい」がありますね。
里美さん:また別の見方もできるのかなと思います。
たとえば畑なら「竹チップ」を撒けば除草剤はいらない、もしくは減らすことができる。
化学肥料もいらなくなるかもしれないんですね。
なのになぜあえて化学的なものを使って環境に悪いことをして、竹林を使わないの??という疑念があって。
森林に関しても、石油ストーブを使わなくても身近な薪を使えばわざわざ遠くの国から莫大なエネルギーを使って運ぶ必要がなくなる。
森、山の資源をうまく活用できれば、環境問題、温暖化への取り組みにつながると思っています。
暮らしに繋げて循環をつくる

小林さん:もりとさとの「さと」部分に関しても想いを聞かせてください
聡さん:やっぱり里山を維持するには人が介在する必要があるので、森だけじゃなく里部分も同じフィールドの一部なのかなと思っています。
今は分断されている森と人の境を無くしてフリーに行き来できるようになるのが理想です。
なのでなるべく山の資源を近くの里で使えるように、農作物の栽培や古民家の断熱改修などにも取り組んで資源の流れを作れたらなと思っています。
やろうとしていることはどれも新しいことじゃなくて、人がやっていることを自分もやりたいなと思って取り入れたり、昔の人がやってきたことを組み合わせている感じです。
だからおんなじように僕らを見ていいなと思えば真似して欲しい、誰もが真似できることをしていきたいと思っています。
「生きる力」を取り戻す

2人がこれまでの経験を通して出してくれたキーワードが「生きる力を取り戻す」という言葉でした。
具体的にはどのようなイメージなのでしょうか?
里美さん:「生きる力」は物理的なものだと思っていて。
昔みたいに山から衣食住、エネルギーを享受するイメージですね。
例えば、
「薪をつくるのにどんな方法がある?」
「火はどうやってつける?」
「何が食べれるものなのか?」
など知識、ライフハック的なことです。
これって昔はみんなやってたことなんですよね。
人間としてできる幅を広げていくようなイメージかなぁ。
生活に必要なことなはずなのに、現在は便利になりすぎて乖離してしまっていると感じます。
みんなで「生きる力」を取り戻して共有できたらいいなと。それが心の面にも繋がってくると思うんです。
いつか自然災害や資源不足に直面することがあるかもしれない。
その時に、山の資源を活かすことで生き延びる力を持っている人が増えれば、もっと安心して暮らせるんじゃないかって思います。
一緒に「つくる」ことから始まる未来

もりとさとの活動は、いかに効率よく拡大するか、といった資本主義的な概念が上位に来るのではなく、目指す環境や暮らしや楽しさがあって、それを実現するために事業があることがわかりました。
そして、もりとさとには山をつくり、山を使った暮らしをつくる実践者の聡さんと、誰もが暮らしに取り入れられる仕組みをつくる里美さん、2人のつくり手がいました。
2人を支える仲間もすでにたくさんいらっしゃいます。
自分たちの手でつくること、みんなで一緒につくることが結果生きる力になる。
いろんな人が自然を楽しんで少しずつ人と自然が共生できる未来をつくる。
そんなビジョンが伝わるように、これからMOCHI designではビジュアルで表現するお手伝いをしていきます。
次回はコピーライター小林さんのご提案で決定した「スローガン・ステートメント」とそれを元に考案した「キービジュアル」とその制作プロセスもご紹介します。
【もりとさとについて】
Instagram @mori_to_sato
【クライアント情報】
合同会社もりとさと 様
事業内容 / 森林・竹林整備業、木材、竹の製品化、里山の魅力を伝えるワークショップの開催、山林の資源を使った農作物の栽培、古民家の断熱改修….etc.
事業テーマ / 荒廃した森林・竹林の整備とそこから生まれる林産物活用