MOCHI designの安里望( @nozomi_asato ) です。
永く愛されるブランドづくりをテーマにグラフィックデザイナーとして長野県上田市を拠点に活動しています。
今回は、新サービスとして構築中の「ブランディングスタートプラン」クライアント様の制作プロセス第2回をお届けします。
ブランディングスタートプランは見た目だけではなくブランドとしての言葉や行動も一緒に考え、ブランディングの基盤をしっかりと作り上げるトータルサポートプランです。
もりとさとの事業は森林・竹林の整備だけでなく、そこから生まれる林産物等を活用するところまで事業化し、長年荒廃した里山の付加価値をつくり、持続可能で豊かな暮らしへ繋げることを目標とされています。
前回は、代表の田村 聡さんと副代表の市川 里美さんに会社設立の背景や活動への想いを伺いました。
前回記事はこちら。
今回はスローガンとステートメントの決定からキービジュアルの提案・決定まで、その制作プロセスをご紹介いたします。
スローガンは「つくるは、生きるだ。」に決定
まず、コピーライターの小林さんにブランドの軸となる言葉の開発をしていただきました。
スローガンはいくつかの提案を経て 「つくるは、生きるだ。」 に決定。
この言葉は「生きる」「人と自然の相互作用」「つくる」といった、もりとさとにとっての重要なキーワードを導き出し、深掘りし、最終的には極限まで削ぎ落としたシンプルなものになっています。
このスローガンにステートメントを合わせることによって意図を補足し、具体的な行動につながるブランドとしての言葉が出来上がりました。
最終的なスローガンとステートメントがこちらです。
この言葉が今後のもりとさとの活動において、意思決定の指針となります。
そしてコピーの提案段階で、メッセージを視覚的にも伝えるキービジュアルの制作をスタートしました。
キービジュアル制作では「客観性」を重視、そのためのプロセス・思考
キービジュアルは実際の提案資料を出しながら解説していきます。
まずは初回ヒヤリングからの考察で、今回は会社を人に見立てて「パーソナリティ」という形で表現しました。
ここで改めてクライアントの言葉と、私がどう受け取ったのかを提示し、微妙なニュアンスの違いがあれば意見をもらって擦り合わせるようにしています。
見た目だけだと好き嫌いや流行りに左右されてしまいがちなので、このように自分自身の想いや在り方、届けたい相手に意識を向けることはとても大切なことだと思っています。
次に印象のポジショニングマップを作成しました。
類は友を呼ぶと言いますが、似たもの同士は自然と集まります。
もりとさとの事業はさまざまな人と関わる必要はあるものの、理想や目的は比較的はっきりしており、共鳴できる層にきちんと刺さる見せ方にする必要があると考えました。
まずは大方の位置を決め、さらに3案それそれで若干ズラして比較できるようにしました。
このように微妙なニュアンスの違いも言語化、可視化し、どんな印象に寄せるべきなのか議論することでより客観的な判断ができると考えています。
このプロセスを挟むことで、ビジュアルを決めるにあたって重視してほしいことを最初にお伝えすることができたと思います。
※考察部分の内容はクライアントによって変わります。
キービジュアル制作で難しかった点
もりとさとの場合、
■事業内容が多岐にわたっていること
■代表2人がいい意味で違う特性を持っていること
などからさまざまな展開の余地、可能性があり、全て加味すると結果ぼんやりとしたビジュアルになってしまう懸念がありました。
そのため、実践的なイメージか、概念的なイメージか
「つくる」や「生きる」をどういう温度感で伝えるのがベストか、とても悩みました。
そんな点も踏まえて、包括的な理念は大事にしつつ、取捨選択できるような方向性を変えたたたき案3つをご提案しました。それぞれ紹介していきます。
※提案時点では、まだステートメントが確定していない状況でしたので、仮のコピーが入ったものになっています。
ビジュアル案A「自然との融合、響きあい」
A案は、もりとさとの言う「生きる」とは具体的にどういう状態なんだろう?と問いを立て、深掘りして、私たちが普段見ている「外の自然」と、生命体としての人間の「内なる自然」の融合、響き合いをイメージしました。
抽象的で掴みにくさもあるので、ターゲットは狭くなりますが、その分深い繋がりが生まれるようなビジュアルです。
マッピングではニッチ寄りの位置づけになります。
ビジュアル案B「守り繋ぐ宝物」
B案は、写真と言葉でシンプルに丁寧に伝えるものになっています。
特定の印象を纏うのではなく、自然や里山の魅力的な部分を一つ一つ丁寧にフラットな器に集めていくイメージです。時代が変わっても変わらない価値をどう守り、どんな世界をつくれるのか、可能性の余白を残しています。
マッピングは縦軸も横軸も幅広くカバーするイメージです。
ビジュアル案C「暮らす、働く、遊ぶ、全部」
C案は、森でいろんなことを体験する楽しさやワクワク感を大事にして制作しています。
概念的なことではなく、人間の実践的、単純明快な感じを表現しました。
3案の中ではいちばん大衆寄りで非日常を感じる案です。
あくまで「暮らし」のイメージは守りつつ「静」ではなく「動」のデザインで、解りやすくて親しみやすいのでターゲットも広くなります。
決定案はC案に
3案を全てご提案したところ、「全部良い!」「どれが良いか悩む・・・」と嬉しいことに(?)どの案も好評でした。
ですが、この時点でスローガンが「つくるは、生きるだ。」にほぼ決定していたこともあり、「生きる」の具体的な答えが「つくる」だと言い切っているので、ビジュアルでふんわりさせるよりさらに先の具体的な展開をイメージできる案がしっくりくるということでC案に方向性が決定しました。
そして最終的にステートメントも確定して完成したキービジュアルがこちらです。
「つくるは、生きるだ。」をより具体的に表現し、「楽しさ」や「暮らし」のイメージも持ちやすいビジュアルになったと思います。
その後、キービジュアルを実際にどのように使用していくか?展開していくのか?を使用シーンを想定してご提案していきます。
次回は、その具体的提案等をご紹介いたします。
【もりとさとについて】
Instagram @mori_to_sato
【クライアント情報】
合同会社もりとさと 様
事業内容 / 森林・竹林整備業、木材、竹の製品化、里山の魅力を伝えるワークショップの開催、山林の資源を使った農作物の栽培、古民家の断熱改修….etc.
事業テーマ / 荒廃した森林・竹林の整備とそこから生まれる林産物活用